2023年10月30日月曜日

したたかに生きた幕末の庶民ー講演会『庶民が生きた幕末維新』を開催しましたー

 今治城で特別展記念講演会『庶民が生きた幕末維新』を開催しました。



今回の講演会では、愛媛県歴史文化博物館学芸課長の井上淳先生をお招きして、「藤井此蔵が生きた幕末維新 -大三島出稼ぎ大工の情報世界―」と題してご講演いただきました。









井上先生は、幕末維新の時代を農民・出稼ぎ大工・商人として生きた藤井此蔵について、此蔵が書き残した記録「藤井此蔵一生記」を題材にお話しされ、



此蔵は越智郡井ノ口村(今治市上浦町)出身で、他所へ赴いて仕事をする出稼ぎ労働者が多くいた瀬戸内海島嶼部において、此蔵も出稼ぎ大工として備中国木之子村(岡山県井原村)で八幡宮本社再建で棟梁をつとめたこと、



商人として穀物売買などを行っており、商売を始めた天保期以降、多くの情報を積極的に収集し、大塩平八郎の乱・黒船来航・安政の南海地震の情報を瓦版・同郷の大坂への出稼ぎ者・写しが流布していた老中側近の書簡など様々なルートから手に入れていたことなどを紹介されました。



幕末維新期を強くしたたかに生きた庶民の姿のお話が大変興味深く、講演会に参加いただいたみなさまからも「幕末のイメージが変わった」「此蔵さんの記録は詳細で、幕末の様子を想像しやすかった」「此蔵の日記を読んでみたくなった」などの感想をいただきました。



参加いただきました皆様、ご講演いただきました井上淳先生、ありがとうございました。



講演会に参加して「もっと知りたい!」と思った方、参加はしてないけれど此蔵さんや幕末と庶民について「おもしろそう!」と思った方、


藤井此蔵の記録「藤井此蔵一生記」は、


宮本常一・谷川健一・原口虎雄編『日本庶民生活資料集成 第2巻』(三一書房1969年)で活字化されています。



史料を読むのは難しそう・・・という方には、「藤井此蔵一生記」やそのほかの庶民の記録類をもとに書かれた著作として、


佐藤誠朗『幕末維新の民衆世界』(岩波書店1994年)もおすすめです。






なお、今治城 特別展図録「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末―」では、井上先生にご寄稿いただいたコラム「藤井此蔵が生きた幕末維新ー大三島出稼ぎ大工の情報世界ー」を掲載しています。


図録は今治城天守1階および特別展会場(山里櫓)で販売しています。


こちらもあわせてお楽しみください。



学芸員M


【おしらせ】

特別展「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末―」

会期 ~12月10日(日)

会場 今治城山里櫓


学芸員によるギャラリートーク(展示解説会)

11月23日(木・祝) 14:00~

申し込み不要・観覧券が必要


詳細は今治城HPへ

特別展「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末―」

2023年10月19日木曜日

幕末!ー特別展がはじまりましたー

 秋らしい気候になり、城めぐりにはよい季節になりました。


今治城へは平日でも約300人の方が来館されています。


秋晴れの今治城





さて、今治城山里櫓では特別展「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末―」がはじまりました。(会期:2023年10月7日から12月10日)








今回の特別展のキーワードは、「幕末」「民衆・庶民」です。




みなさんは「幕末」というと何をイメージするでしょうか。




坂本龍馬や西郷隆盛、新選組、高杉晋作といったヒーロー


あるいは、ペリー来航、禁門の変、大政奉還、戊辰戦争などといった事件


そういったことをイメージする人が多いのではないでしょうか。







ドラマや漫画、ゲームといったエンタメでも取り上げられるこのようなヒーローや大事件のエピソードは、幕末好きにとっては血の騒ぐものばかりです。



かくいう本特別展担当の学芸員も、幕末好き。



担当学芸員の幕末入門は、中学生のころに夢中でプレイした新選組が活躍するゲームです。



高校生のころにはオープンキャンパス(大学の見学)にかこつけて、新選組関係の史跡をめぐりました。



高校生当時に撮った京都の西本願寺太鼓楼(新選組屯所跡)の写真




しかし、実は「幕末」という時代を経験したのは、こういった華々しい活躍をしたヒーローたちだけではありませんでした。



また、ペリー来航や戊辰戦争などの大事件もヒーローたちだけに関係するものではありませんでした。




ここで出てくるのが、2つ目のキーワード「民衆・庶民」です。




ヒーローたちが活躍したのと同じ時代、彼ら、民衆・庶民はどのように幕末を生きぬいたのでしょうか?



幕末好きでも、あんまりよく知らないな…という方が多いのではないでしょうか。


そこで今回は、民衆・庶民視点を取り入れて今治市域ゆかりの歴史資料を展示しました。


たとえば、幕長戦争(長州征伐)で船のこぎ手として動員された人びと、外国船の来航に対応して海岸防備のために集められた人びと、などなど



幕末の事件や政治の動きと関連させながら紹介しています。




新たな幕末史を発見していただけることと思いますので、ぜひ期間中にご来館ください。




また、今回の特別展では図録を発行しています。


内容の充実はもちろんのこと、表紙・誌面デザインにもこだわって作成しました。







図録は、天守1階グッズ売り場と、特別展会場の山里櫓で700円(税込)販売しています。



ぜひお手に取っていただけますと嬉しいです。



さらに、特別展期間中には、講師として愛媛県歴史文化博物館 学芸課長の井上淳氏をお招きして、記念講演会「庶民が生きた幕末維新」を開催します。


参加は事前申し込みが必要です。


講演会の内容や申し込み方法などの詳細はコチラから↓


特別展関連企画 講演会



さらに、さらに、11月23日(木・祝)14:00~は、展示を担当した学芸員によるギャラリートークを行います。



こちらは申し込み不要です。天守1階で観覧券をご購入のうえ、特別展会場(山里櫓)へお越しください。


特別展詳細↓

特別展「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末―」


学芸員M