2019年3月16日土曜日

学芸員のお仕事~史料調査~

皆さん、こんにちは。

現在、今治城には2名の学芸員が在籍していますが、普段は天守の中にある事務所に詰めて、天守内部で史料を展示したり、収蔵史料の調査・整理を基本的な仕事としています。
例えば天守2階~4階で展示している史料の解説文(キャプション)を作成するのも学芸員の仕事です。

しかし、その活動範囲は今治城内にとどまりません。
時には地域(今治市内外問わず)へ出ていき、神社や寺院、或いは個人宅に赴いて、そこが所蔵している古文書等の史料を調査する事も学芸員の大切な仕事の1つです。

先日は今治市延喜にある乗禅寺という真言宗の寺院で、史料調査を行ってきました。


乗禅寺全景。写真は昨年夏に撮影されたものです。

乗禅寺は、別名「延喜の観音さん」として地域に親しまれているお寺で、その創建は平安時代、醍醐天皇(885~930)の頃までさかのぼると云われています。

中世に入ると後醍醐天皇から帰依を受けると同時に、伊予国の守護大名である河野氏の庇護を受け、大いに栄えました。

そうした長い歴史と由緒を持つ乗禅寺が所蔵する史料を調査する事になったわけですが、今回は今治市文化振興課・村上水軍博物館による史料調査に合流する形で、今治城も参加する事になりました。

調査対象となった史料は、乗禅寺に伝わる棟札11点及び仏具や掛軸です。

※棟札=建物が上棟した時に、屋根裏に据える建築年や施主
    及び建築に携わった人たちの名前等が書かれた札。

棟札の全体像はこういう形になっています。



まずは、棟札のサイズ(法量)をメジャーで計り、記録します。


棟札のサイズを計測。

次に棟札の写真を撮ります。
文字が読み取れるように、3~4回に分けて撮影します。

棟札の写真を撮影。

最後に棟札1枚1枚を並べ、書いてある内容を調べて記録をとります。(年号・人名等)
棟札に書かれている内容を調べます。


     
文字を読み解いていくと様々な発見があります。
    
 
          
   史料調査は、地域の歴史研究のために欠かせないものでありますが、それ以上に大切なのは、市内のどこに、どんな史料が存在しているかを学芸員側が把握するという点です。
 所在と内容さえ把握していれば、例えば災害が発生した時に史料を迅速に救出する事も可能です。昨今頻発する自然災害を考えると、地域の歴史を物語る史料の把握はとても重要といえます。

 史料調査というのは、地道なものではありますが、未知の史料と遭遇した時のドキドキ感を味わえるのも、学芸員の仕事の醍醐味と言えるでしょう。

                    今治城学芸員
                     伊津見孝明