今治城では、平成29年度特別展として10月7日(土)から江戸時代を通じて今治藩主久松松平家に仕えた家臣たちをテーマとした「今治藩の家臣団」を開催しています。
家臣の家に伝わる武具甲冑・古文書など合計50点におよぶ貴重な史料を展示している特別展ですが、先日10月21日(土)1330から吹揚神社寿殿(旧今治城二之丸)で、関連企画として講演会「江戸武士の二つの顔 戦士と役人」が行われました。
会場の寿殿は参加者で大盛況でした。 |
講師は、九州大学大学院比較社会文化研究院教授で日本近世史をご専門にされている高野信治先生です。
現在開催中の特別展は大名家の家臣、すなわち武士にスポットを当てていますが、今回の講演では近世社会における武士の実像について近世大名家やその家臣団の事を長年研究されている高野先生に「江戸武士の二つの顔 戦士と役人」というタイトルで講演して頂きました。
多くの史料をもとに武士の実像について話して頂きました。 |
平和な時代における武士とはどんな存在だったのか? 先生は現代社会と対比してわかりやく解説されていました。 |
中世から戦国時代まで武士は戦闘者であり、領主という側面を持っていましたが、戦争がない平和な江戸時代において武士本来の性格がどのように変化していったのか、「戦士」と「役人」をキーワードに考えるという内容でした。
江戸時代以降、武士は役人としての性格が強くなりますが、各藩に残されている役人としての職務規定には公私の区別をしっかりするように藩から求められている等、現代社会でも通ずるものがあり、参加された皆様にとっても武士の存在が身近に感じられたのではないでしょうか。
続いて、高野先生の後に今治城学芸員である私、伊津見が「今治藩の家臣団の形成過程」というタイトルで少しばかり講演させて頂きました。
今治藩の家臣団のは4つの時期にかけて形成されていった事
を中心に解説しました。
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今治藩の家臣団というのは、初代藩主松平定房の父である松平定勝から付属された家臣や、改易された大名家の元家臣(浪人)、或いは他の大名家の家臣の次男・三男や、在地(今治)出身の者たちで構成されていました。
出自も経歴も皆バラバラで、それが大きく4つの時期にかけて形成されていったという事を中心とした内容で講演させて頂いた次第です。
講演会当日は、台風が接近していた事もあり、天気も非常に悪かったのですが、それにも関わらず70名もの方が参加されて大盛況でした。厚く御礼申し上げます。
近世社会における武士の在りかたについて、そして今治藩の家臣団について少しでも参加された皆様の理解が深まって頂ければ幸いです。
また、この日は旧今治藩主家末裔の久松定順様とかつて今治藩に仕えていた家老の戸塚家を始めとする旧家臣の末裔の方々がたくさん参加されていました。
恐らく、藩主と家臣のそれぞれの末裔が対面したのは、久しくなかったと思われます。
そういった意味でも、今回の講演会は非常に意義深いものになったのではないかと思います。
今治城としては、今後も秋の特別展で関連企画として講演会を行う予定でおりますので、よろしくお願い致します。
今治城 学芸員
伊津見