こんにちは。
ヒヨッコ学芸員のMです🐥
新型コロナ感染対策のため、引き続き籠城中(臨時休館)の今治城……
最近はみなさまに登城していただける日に備えて、次の企画展に使える資料はないかと館蔵品を探索しております。
そこで今回は旧今治藩主久松家に伝来した史料群の中から、探索中にグッときた1点をチラ見せしちゃいます!
ご紹介しますのはこちら
(明治38年8月)『古今無類 愚痴小言珍体詩』今治城蔵(久松家旧蔵)
この冊子には3編の「珍体詩」がしたためられているのですが、そのうちの1編を見ていきましょう。
蒸気船の船着き場は汽笛がポーポーうるさいし、
障子の隙間から煙が入り、喉はイガイガ、咳も連発。
でもまぁ、相手(蒸気船)は「下素なお尻に廻轉車の一銭蒸汽」なんだし勘弁してやるか……
そして詩の最後では、蒸気船から立ち上る臭くて黄色い煙は「ペストの予防」だと言っています。
詩がつくられたのは明治38年(1905)。
中国雲南地方の地方病であったペストが香港まで広がったことに端を発し、ペストはパンデミック(世界的大流行)となり、
日本でも明治32年(1899)から大正15年(1926)までの間、度々の流行に苦しめられました。
ペスト菌に感染したネズミが船の貨物などと共に運ばれ、全国に広がったとされています。
詩によまれたモクモクと煙を出す蒸気船が行き交う様子は、当時の世相をよく表していますね。
ペスト流行の渦中にあってつくられた詩ですが、深刻さを感じさせず、むしろ愉快な調子さえ感じる詩風は、作者の不安な気持ちの裏返しなのでしょうか……
※この記事は、2021年4月22日~5月19日の期間中に、今治市の学芸員等の職員が、市内の博物館・美術館のことや、史跡や文化財・作品のことなどを毎日発信するTwitter企画「#おうちでバリミュ」の一つです。
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